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血糖変動のデータと糖尿病治療

はじめに

 

これまでの自己血糖測定(self-monitoring of blood glucose; SMBG)では1日数回血糖測定を行う「点」で確認していました. 新しい血糖測定の方法である持続血糖モニター(continuous glucose monitoring; CGM)やフラッシュグルコースモニタリング(flash glucose monitoring; FGM)では連続的に血糖値を測定することができるので「線」として血糖変動を確認できるようになりました.血糖変動のデータをどのように糖尿病治療に生かしていくのかを考えてみたいと思います.

 

Time in rangeについて

 

Time in range(TIR)という便利な指標があります.血糖変動の範囲を70mg/dl〜180mg/dlに設定してこの範囲で血糖が推移している時間の割合を指します. 高齢ではなく合併症が進行していない糖尿病患者さまではTIR70%以上を目標とします.具体的には血糖70mg/dl未満で推移する時間の割合(Time below range; TBR)と血糖181mg/dl以上で推移する時間の割合(Time above range; TBR)を少なくすることが求められます.極端な高血糖是正したり夜間の低血糖を予防する必要があります.

 

食後高血糖を是正する

 

食後の血糖変動についても食事の内容に応じて大きく異なることがわかるようになりました.炭水化物(糖質)のみを最初に沢山食べると血糖値が急上昇してしまいます.副食の食べ方を工夫することで血糖上昇を緩やかできることも数値として実感することができます.食物繊維を多く含む野菜を先に食べることで食後高血糖を是正できますし,最近ではお肉を先に食べることで食後血糖上昇を抑えることができるという報告もでてきています.また間食に伴う血糖上昇も数値として把握できます.

 

夜間低血糖の予防

 

寝ている間は自己血糖測定を行うことはできませんがFGMやCGMによって寝ている間の血糖変動がわかるようになりました.通常低血糖症状が出現すれば目を覚まします.しかし夜間低血糖を繰り返していると自律神経の働きが弱くなってしまうため低血糖症状が現れないまま意識障害や昏睡となってしまう危険があります.低血糖を放置しないことと低血糖を予防することが大切です.夜間の血糖が下がっている場合には薬剤の調整を行ったり寝る前に捕食を摂取するなどの対応が必要になります.

 

まとめ

 

血糖変動を糖尿病患者さま自身がわかるようになりました.TIRは血糖変動を知るためのわかりやすい指標であり,TIRを目標に近づけるためには食後高血糖を是正したり夜間低血糖を予防することが大切です.血糖変動のデータを医師と患者さまが共有して血糖変動の少ない治療を選択していくことが長期的な合併症予防につながると考えます.今回は血糖変動のデータをどのように治療にいかしていくのかについて述べさせていただきました.次回は「糖尿病と食道,胃の病気」と題してご紹介したいと思います.

 

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