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便潜血検査と大腸の病気

はじめに

日本人の2人に1人ががんにかかる時代となりがんは決してめずらしい病気ではなくなりました.身近になったとはいえ早期発見することが重要であることは紛れもない事実です.消化管(食道・胃,大腸)のがん検診は食道・胃では胃カメラ検査が一般的ですが,大腸カメラ検査は検診で一般的には行われていません.まず便潜血検査をうけることが多いと思います.今回は便潜血検査についてご紹介したいと思います.

 

便潜血検査とは

便を専用のスティックで擦って検体を採取します.異なる日に1回づつ合計2回検体を採取する検査方法を2回法といいます.検査には化学的方法と免疫学的方法があります.化学的方法は赤血球中のヘムがもつペルオキシダーゼ様作用を検査します.肉や魚料理に含まれる血液や鉄剤などで偽陽性となってしまうデメリットがあります.一方免疫学的方法はヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて検査をします.肉や魚の血液や鉄剤には反応しません.ヒトの血液にのみ特有に反応する免疫学的方法が現在用いられています.

 

どのような病気で便潜血検査陽性となるのか?

免疫学的方法ではヒトヘモグロビンが胃酸や膵液・腸液などの消化液と交わり変化すると陽性にはならないため大腸の出血を調べる検査方法です.大腸から肉眼的に出血している場合には便潜血検査は陽性となります.炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎 クローン病),出血性腸炎,虚血性腸炎,憩室出血,痔出血などが鑑別される病気です.肉眼的には出血を認めない場合で便潜血検査が陽性となる場合もあります.大腸がんや大腸ポリープが鑑別としてあげられます.しかし便潜血検査の感度は高くても約80%とされており,病気であっても陰性となる場合があるので注意が必要です. 

 

便潜血陽性結果と大腸がん・大腸ポリープ

肉眼的に出血がみられない場合で便潜血検査が陽性の場合には大腸がんや大腸ポリープの可能性があります.便潜血検査が陽性の場合には大腸の精密検査をうけることをおすすめします.精密検査は通常大腸カメラ検査が行われます.便潜血検査が陽性で大腸カメラ検査を行った場合に約半数のかたに大小の大腸ポリープがみつかり,約10%のかたに大腸がん(早期がんと進行がんをあわせて)がみつかるといわれています.大腸ポリープが進行して癌化すると考えられていますので,大腸ポリープも小さいうちに発見してカメラで切除することががんの予防につながります.

 

まとめ

肉眼的に便に血が混ざる場合には痔の出血ばかりではありません.腸が炎症をおこしている可能性もありますので消化器内科を受診する必要があります.肉眼的に便に血が混ざっていないが便潜血検査が陽性の場合には大腸ポリープや大腸がんの可能性があります.精密検査として大腸カメラをうけることをおすすめします.当クリニックでは苦しくない大腸カメラを心がけて検査にあたっております.便潜血検査が陰性であっても大腸がんや大腸ポリープが潜んでいる可能性があります.50歳以上,家族に大腸がんのかたがいる,肥満,糖尿病では大腸がんや大腸ポリープのリスクが高いとされています.あてはまる方は便潜血検査が陰性であっても一度は大腸カメラ検査をうけることをおすすめします.

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