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僕が糖尿病専門医になった理由(わけ)

はじめに

医師になって20年近くが経過しました.北海道大学医学部を卒業して新宿にある東京女子医科大学病院消化器内科で研修を開始して以来消化器内科診療(消化器病専門医・消化器内視鏡専門医)に従事してまいりました.医師になって13年目から現在までは糖尿病診療を中心に据えて現在勤務する病院で糖尿病患者さまの診療にあたってきました.もちろん糖尿病患者さまの胃カメラ検査や大腸カメラ検査を日常行っております.糖尿病専門医を2016年に取得しました.糖尿病専門医と消化器内視鏡専門医,消化器病専門医を1人のドクターが取得しているのは山梨県内では現在(2021年5月)わたくしひとりです.前置きが長くなってしまいましたがどうして私が糖尿病専門医を取得するに至ったのか?その理由につきましてご紹介したいと思います.

 

消化器内科診療と糖尿病の関係

消化器内科では消化管の胃や大腸,代謝に関係する肝臓,ホルモンの分泌にかかわる膵臓などの検査・治療を行います.糖尿病は食事,食欲と関連しますので胃の状態と関係があります.また肝臓は血液中のブドウ糖を取り込んで血糖値を低下させる働きをしたり空腹時の血糖値を維持するためにグリコーゲンを貯蔵しています.膵臓は血糖値を低下させるインスリンを分泌する重要な働きがあります.近年腸内細菌と糖尿病の関連も明らかになってきています.このように消化器内科で診療する多くの臓器は糖尿病と関係することがわかります.消化器病専門医であるわたしが糖尿病に興味をもったのはごく自然なことなのかもしれません.

 

糖尿病専門医と消化器病専門医

糖尿病の患者数は予備軍を含めると全国で約2000万人といわれています.そのうち糖尿病が強く疑われるかたは約1000万人です.そのうち実際に通院して治療をうけている糖尿病患者さまは約300万人で7割のかたは糖尿病と診断されても治療をうけずに放置している,あるいは治療を中断してしまっています.その原因として患者さまの増加に比べて専門医が少ないことがあげられます.消化器疾患の専門資格である消化器病専門医と比較してみましょう.山梨県内では消化器病専門医が121人,糖尿病専門医が38人と糖尿病専門医が少ないことがわかります.糖尿病専門医の診療を糖尿病患者さまに定期的にうけていただくために専門医の資格を自ら取得しようと考えるようになりました.

 

糖尿病治療は百人百様

消化器疾患の診療ではドクターによって治療法がかわることはあまりありません.学会のガイドラインによって病気ごとの標準的な治療が決められています.一方糖尿病の診療ではドクターによって用いる薬が違うことはよくある話ですし,患者さまの状態をみきわめた上で薬の副作用を懸念してインスリン注射を用いる場合もあります.食事療法においてもカロリー制限法がよいのか?糖質制限法がよいのか?は議論されており「絶対」の治療法のないのが糖尿病といえます.糖尿病患者さま個々の病状にあわせた治療を個別に行うことは重要でやりがいを感じたことが糖尿病専門医を取得した最大の理由ではないでしょうか.

 

まとめ

糖尿病専門医の資格を無事取得して日々糖尿病患者さまの診療にあたっておりますが糖尿病治療のむずかしさを痛感しております.それだけにやりがいも感じております.どうして私が糖尿病専門医を取得するに至ったのかを述べさせていただきました.次回は病院勤務医から独立して糖尿病専門クリニックを開院しようと決意した理由についてお話したいと思います.

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